「ゆったりした時間って大切だなぁ。」
この絵本を読み終えたときの感想です。この絵本は、次の展開が読めるシンプルなストーリーなのですが、ゆったりとした時間が、自分と向き合わせてくれて、人生を豊かにしてくれるのかもしれないなと思わせてくれるお話です。
シンプルであるものの深みがあるお話なのですが、キャベツくんとブタヤマさんというコミカルなキャラクターが作り出す独特の雰囲気がなんとも言えない親しみやすさがある絵本です。
食べられそうなキャベツくん
この絵本はいきなり残酷な始まりかたをします。
キャベツくんが歩いていると、腹を空かせたブタヤマさん出会い、「お前を食べる!」と言って、キャベツくんを捕まえるのです。
大人が読むと、ブタヤマさんのぶっ飛び具合に仰天してしまいますが、お腹が空いている状況で、目の前に食べ物が歩いてきて、それを食べようとする一連の流れは、小さな子供でも十分に状況理解ができるシンプルなストーリーで、個人的には大好きな流れです。
食べられたくないキャベツくん
ブタヤマさんに食べられそうになったキャベツくんは、当然食べられたくないと思います。そして、ブタヤマさんに、自分を食べるとキャベツになってしまうよということを言います。
ブタヤマさんが空を見ると、なんと鼻がキャベツになっているブタヤマさんが浮かんでいるではありませんか。ブタヤマさんはびっくりしてしまいます。
ブタヤマさんは、キャベツを食べた自分を想像して、空というキャンバスに描いたのです。
キャベツくんを食べることにブタヤマさんは躊躇した様子で、キャベツくんの作戦は大成功に終わります。
想像というキャンバスにはなんだって描ける
キャベツくんを食べることを諦めたようにも思えるブタヤマさんは、ヘビがキャベツくんを食べたらどうなるんだと、キャベツくんに聞きました。
キャベツくんは、「こうなる!」とだけ言いました。
すると今度は空にお団子みたいなキャベツのヘビが浮かんでいたので、ブタヤマさんはびっくりしてしまいました。
それと同じ流れで、ブタヤマさんは空に浮かんだタヌキ・ゴリラ・カエル・ライオン・ゾウ・ノミ・クジラを見て、毎回びっくりするのでした。
最後のクジラのときには、ブタヤマさんは、こんな大きなキャベツを食べたらお腹がいっぱいになっていいだろうなぁと思いました。
お腹を空かせたブタヤマさんの想像力はどんなキャベツでも空に描きます。
その様子を見たキャベツくんは、ちょっとブタヤマさんがかわいそうになります。
キャベツのクジラを見たブタヤマさんは、そこから何も言わなくなりました。
そして、何か御馳走してあげるからレストランに行こうというキャベツくんの誘いで、よだれを垂らしながら手を繋いで歩いていくのでした。
キャベツくんも見えてたの?
この絵本では、キャベツくんが空に描いたイメージをブタヤマさんに見せているようなやりとりをするのですが、実際にブタヤマさんが見たものは、ブタヤマさん自身が描いたキャベツだったのだと思います。
キャベツくんは、お腹を空かせたブタヤマさんなら、容易に空にいろいろなキャベツをイメージすることができると思い、「こうなる!」ということを言ったのではないでしょうか。キャベツくんの想像力もなかなかすごいものがありますよね。
人はその時々で想像できるものは異なってきます。ブタヤマさんだってお腹がいっぱいのときに空を見上げたら、別のものが空には描かれたでしょう。
自分の思ったことを上手くイメージすることができるようになれば、楽しい想像もたくさんできるようになって、人生を豊かにしてくれます。子供に豊かな心に育ってもらうために、ブタヤマさんの真似をして、空にいろいろなものを描いてみるのもいいかもしれませんね。
自分の心の中が見えていますか?
私たちも、今自分が思っていること、感じていることを、空でも見つめながらゆっくりと考える時間を作ることで、今まで気づかなかったことに気づけるかもしれません。
この絵本は、目に見えているものだけではなく、自分の心がどんな状態なのか向き合うことの大切さを教えてくれているような気がします。
子供のときに自分の気持ちと向き合うことをしっかりしていれば、大人になって余裕がないときでも、意識的にそのような時間を作らなければということを思う子に育ってくれるかもしれませんね。
そして、大人になった私たちにも、ゆっくりと落ち着いて自分の世界に浸る時間を作ることが大切だなということを伝えてくれているようでもあります。
私たち大人にも大切なことを、自然な形で子供に伝えてくれる一冊ですので、ご興味のある方は図書館で探してみてください。
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