人の欲望には際限がありません。何かを達成すると、もっともっとと、次の欲望に向かって動き出します。こんな欲望があったからこそ人類は発展を続けてきたので、欲望そのものは決して悪いものとは言えません。
ただ、欲望に支配されてしまうと、今ある幸せに気づけないということもあります。本当は今幸せなのに、欲望に意識が向いていて、目の前の幸せを感じることができていないという人もいます。
今回紹介する絵本は、そんな目の前にある幸せを大切にしなきゃなと感じることができるお話です。
もっと幸せになりたいまりーちゃん
まりーちゃんは、ひつじのぱたぽんと暮らしています。
まりーちゃんは、今よりもいい暮らしをするために、ぱたぽんがたくさん子供を産み、その子供の毛を売って、いろいろなものを手に入れたいとぱたぽんに話します。まりーちゃんは、羊の毛を売って、そのお金でより良い暮らしをするために、ぱたぽんが子供を産むことを望みました。
ぱたぽんも、子供を産むことについては賛成でしたが、何匹子供が産まれようと、ぱたぽんは原っぱに暮らすのに、まりーちゃんが欲しがっているものはいらないと言います。ぱたぽんは、家族が増えて幸せに暮らすために、子供を産みたいと思っていたのでしょう。
結局、ぱたぽんの子供は1匹しか産まれず、まりーちゃんの靴下が編めるぐらいの毛しか取れなかったというところでお話は終わります。
ずっと幸せだったぱたぽん
このお話で、ぱたぽんはまりーちゃんと仲良く暮らしていることで十分幸せだったのだと思います。そして、子供が増えることも、ぱたぽんにとっては幸せなのだと思います。
今十分に幸せを感じられているので、もっと豪華な暮らしがしたいなんて思っていませんし、子供が産まれなくても幸せに暮らし続けることでしょう。一方でまりーちゃんにとって、より幸せになるには、ぱたぽんがたくさん子供を産む必要がありました。
一緒に暮らしているまりーちゃんとぱたぽんですが、今とても幸せかと聞いてみると、違った答えが返ってきそうですよね。
足るを知ることの大切さ
このお話で、ぱたぽんが伝えてくれているのは、「足るを知る」ということではないかと思います。今すでにある幸せに気づかないでいるまりーちゃんと、まりーちゃんと暮らしていることが幸せなので、これ以上なにか手に入れようと生活が変わることはないだろうというぱたぽんの対比が、とてもわかりやすくこのことを教えてくれています。
大人も子供も、もっともっとという気持ちがあるというのは自然なことだと思いますし、それ自体は悪いことではないでしょう。
しかしながら、そちらに目がいきすぎて、今感じられるはずの幸せに気づけなかったり、終わりのない欲望に振り回されて、いつまでも幸せと感じることができなくなる危険性があります。
もっともっとと、さらなる高みを目指しながらも、しっかりと今の幸せも感じ取ろうねということをぱたぽんは教えてくれているのではないでしょうか。
こんなことを楽しいお話で学べる一冊ですので、是非図書館で探してみてほしいなと思います。
そして、読み終えた後に、お子様に、「どんな時が幸せ?」という話をしてみるのもいいかもしれませんね。
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