ゆっくり着実に成長するからね 「ベンジーのもうふ」

子育て

ベンジーのもうふ(あすなろ書房)
マイラー・ベリー・ブラウン 文
ドロシー・マリノ 絵
まさきるりこ 訳

テーマ:成長

いつまでも親にベッタリで離れない。
ものすごく甘えん坊でこのままで大丈夫だろうか。

こんなことを思う親御さんはたくさんいると思います。
ただ、それと同時に、子供の方も家族以外の人と接することが不安であったり、未知の世界に飛び込むことが怖いという思いを持っていることでしょう。
今回紹介する絵本はそんな親子にぴったりな一冊です。

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赤ちゃんのときの毛布が手放せない小さな男の子

この絵本の主人公のベンジーは、赤ちゃんのときの毛布が大好きでいつも持ち歩いています
その毛布は今はもうぼろきれのように見えるということなので、本当にいつも肌身離さず持っていたのでしょう。

赤ちゃんの頃から遊んでいたぬいぐるみをいつも持っていないと不安になったり、眠れないという子も多いと思いますが、ベンジーにとって毛布はそんな存在です。

ベンジーはその毛布を幼稚園にも、散髪にも、歯医者にも持って行き、寝るときには毛布を抱きしめます。

さまざまな周りの反応

ベンジーにとって大切な毛布でも、それを理解することができない人もいます。

おとなりのトルーディーは、その毛布をいつ捨てるのかと問いかけます。お兄さんのジムは、そんなぼろっちいものまだ持っているのかと言います。

お父さんは少しだけ理解があるので、毛布がベンジーにとって大切なものだとわかってくれていますが、そろそろいらないんじゃないかといいます。

1番の理解者はやはりお母さんです。お母さんは寝るときに、もうじきその赤ちゃん毛布がいらなくなるわよと言ってくれます。

おとなりのトルーディーやお兄さんはベンジーにとって毛布がどれだけ自分を安心させてくれるものかをわかっていません。

お父さんは、毛布がベンジーにとって大切なことはわかっているものの、いつまでもそんなものを持っていてはお兄さんにはなれないぞという気持ちがあるのかもしれません。

一方でお母さんは温かく成長を見守ってあげています。あなたは必ず成長するから急がなくても大丈夫だよというベンジーへの大きな愛情が感じられます。そしてベンジーもお母さんの言葉に安心しているように思えます。

お兄さんになるときがきた

ある朝、おとなりのトルーディーが最近もらってきた赤ちゃん子猫がよくなくので、お父さんが眠れないと頭を抱えて家族と会話をしています。ベンジーはその様子を黙って聞いていました。

その日、ベンジーはどこへ行っても毛布を忘れてきてしまうのでした。

お母さんがベンジーに、今日は毛布を忘れてばかりいるのねという話をした後に、ベンジーはトルーディーのところへ遊びに行くと言って出かけていきましたが、すぐに帰ってきました。

そしてお母さんにトルーディーの子猫を見てほしいと言って、一緒にトルーディーの家に行きました。

そこにいたのはベンジーの毛布にくるまって幸せそうな子猫でした。なきやまなかった子猫はベンジーの毛布にくるまれてからは安心してなかなくなったのです。

ベンジーは自分が成長していることに自分で気付き、子猫に対して、自分が力を貸してあげられる存在であることにも気がついたのです。

成長の速度は子供が決める

この絵本でベンジーは毛布を手放すタイミングを自分で決めました

毛布を忘れてしまうということは、もう毛布に頼る必要はないと感じ、トルーディーの子猫は不安な気持ちを抱えているので、自分の毛布で安心できるのであればプレゼントしてあげたいと思えたのでしょう。

ベンジーはとても素晴らしい成長を遂げましたが、その成長の裏にはお母さんの存在がありました。お母さん以外の周りの人は、ベンジーがいつまでも毛布を持っていることにどちらかというと否定的であったと思いますが、お母さんの存在があったからこそ、ベンジーは自分で毛布と別れる決断ができるまで、毛布を持ち続けられたのだと思います。

親は子供の気持ちを理解しつつも、無意識のうちに子供の成長をせかしすぎていることが多いかもしれません。この絵本でいうとお父さんのようなタイプです。
本人にはせかすつもりはないのでしょうが、自分自身も子供から大人へと成長してきたので、どのように成長していくかをイメージできてしまい、子供の実際の成長の速度を越えて、子供の成長を考えてしまうものです。

でも、本当に子供にとって大切なのは、自分自身で成長する姿を親が見守ってくれるということなのかもしれません。

同じ子供でも、成長の早い子もいれば、遅い子もいます。それでも共通しているのは、毎日何かを学び、感じ取り、自分のペースで成長をしていくということです。その子にとって必要なことは、その子が自分の力で自然と身につけていくぐらいの気持ちで子供の成長を見守るのが最適ではないかと思います。

この絵本では、親の子供への接し方も学べますし、子供にとっても、あなたは必ず成長していくから安心して毎日を過ごせばいいのよというメッセージを伝えることができるのではないかと思います。

子供がすくすくと育っていくために、とても良い絵本だと思いますので、興味のある方は図書館で探してみてください。

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